どうも梅之です。
というわけで、今回は森見登美彦著作「シャーロック・ホームズの凱旋」の感想です。
シャーロック・ホームズの凱旋 (単行本) [ 森見登美彦 ] 価格:1980円 |
読み終わった後の感想を言うと、「どんでん返しがすごすぎてどこに着地点があるのか全く分からずに最後まで面白かったけど、これってシャーロック・ホームズの話……なんだよね?」といったところ。
いやー、最初はシャーロック・ホームズのパロディ小説なのかな? と思って読んでたのに、読み終わった後には「わ、私は、何を読んでたんだ……?」ってなる感覚。物語の構成に引き込まれてピカイチで面白かったんですが、これをシャーロック・ホームズの話と読んでいいのかめっちゃ迷う。
私は森見登美彦さんの本を読むのは今回が初めてでして。
今回この本を手に取った最大の理由は、「シャーロック・ホームズかぁー。面白そう!」だったので、シャーロック・ホームズの話を期待してたんですよね。
たぶん、その辺から私とこの本の齟齬がでてると思う。
この話、ちょっとだけシャーロック・ホームズが好きなだけの人間には難易度が高すぎるんだろうなぁ。(とんでもなくシャーロック・ホームズに詳しい人が読んだらむしろ伏線がいっぱいあって面白さ爆発してるかもしれない)
つまりはこの本には「シャーロック・ホームズのスランプ」が描かれてて、なんやかんやでそれを克服して華々しくホームズが復活する話なんだろうと思い描いて読み始めたので、中盤までは「おお、なるほどなるほど。なんかスランプ仲間が増えてくなぁー。あ。こいつが事件の犯人かな?」と読み進めていたわけです。
が、終盤にかけて話がどんっと裏返る。
この世界がひっくり返るのが、すっごく心許ない。
今まで読み進めていた世界が実は紙切れで、目の前でビリビリと丁寧に破かれて、「君が今まで夢見てた世界は全部嘘なんだよ。こっちが現実、残念だったね」ってせせら笑われてるような心許なさが付きまとってくる。
でもシャーロック・ホームズを知ってる身からすると、「あ。こっちが現実……、現実なのかぁ」ってなるから、その心許なさの案配がいいんだわ。
で。また話がひっくり返る。
最終的にはいい感じに終わるんだけど、とりあえず当初の私が期待してた「スランプから華々しく復活するシャーロック・ホームズ」は存在しないので、肩透かしを食らったといえば食らったんだろうけど、でも面白かったから問題ない。
冷静に考えてみると、この話ってホームズがスランプになってることもあってか、名推理みたいなのがまったく出てこなくて、探偵小説(推理小説?)ではないんですよね……。ジャンル分けすると何になるんだろう。
というかこの話、私なりに突き詰めていくと「この世界にはどうしようもなく触れてはいけない謎が存在している」「天下のシャーロック・ホームズでさえ記憶を維持したままその謎を解明することはできない=シャーロック・ホームズが解けないレベルの謎となると、そりゃあもう世界存続レベルの謎しかないよね!」なので、遠回しにシャーロック・ホームズ賛歌なのかもしれない。
まあ、舞台がロンドンと京都が入り交じったヴィクトリア朝京都なので、最初から優等生みたいな探偵小説ではないっていうのは、お出しされていたわけですが。
シャーロック・ホームズの名前に惹かれて読み出した身としては、「ホームズ? ホームズかぁ」ってなったりもするけど、でも面白かったので満足です。
ごちそう様でした。
梅之でした。